ロゴ わかりやすいプロジェクトページを求めて

有村 幸峻1, 大海 佑介2, 近野 翼3, 菅谷 友稀4, 竹崎 隼平5, 山本 陸1
1九州工業大学  2慶應義塾大学  3東北大学  4大阪公立大学  5九州大学
研究概要図

概要

よい研究も,その魅力が伝わらなければ多くの人には届かない.論文やコードとあわせて公開される「Project Page」は,研究成果を広く届けるための重要な入口である.一方で,どのようなページが研究の認知や理解につながるのかは,十分に整理されていない.

本プロジェクトでは,CVPR 2023–2025の論文を対象に,Project Pageの公開と引用数の関係,AIによる自動評価と人間の主観評価の関係,そして「わかりやすさ」を左右するデザイン要因を調査した.その結果,ページを公開している論文は引用数が高い傾向にあり,単に情報を多く載せることよりも,動画や図,レイアウト,図と文章のバランスを工夫することが重要だと分かった.

引用数

Project Pageを公開すると,論文はより引用されるのか?

Project Pageの公開が研究の認知に貢献するかを検証するため,引用数を尺度としてProject Pageの有無による差を比較した. CVPRの3年間の論文を対象に各論文の引用数とProject Pageの有無を収集し,各年度の引用数の中央値および四分位範囲を可視化した. 3年分の結果によりProject Pageの公開が引用数向上に貢献する結果が得られた.

引用数の比較結果

定量評価

AIによる自動評価は,人の「わかりやすい」と一致するか?

Paper2Web は,Project Pageの品質を,デザイン性(Aesthetic)・情報の完全性(Completeness)・リンク品質(Connectivity)・インタラクティブ性(Interactive)といった観点から自動評価する枠組みと,論文の内容がProject Pageからどれだけ伝わるかをクイズ形式で測る PaperQuiz を提案している. 本調査ではこれらの既存指標を実際に公開されているProject Pageに適用し,人間の主観的な「わかりやすさ」をどの程度捉えられるかを定量的に検証した.

STEP 1 評価対象 54 CVPR 2023–2025 の論文のProject Page
STEP 2 主観評価 6 各6–10本を分担して順位付け
STEP 3 相関分析 5指標 自動評価指標と主観順位を照合
Paper2Webの評価プロセス図.入力はProject Pageのスクリーンショット・HTMLソース・CSSファイル・JSファイルと,論文本体のmarkdownファイル.評価方法はLLM/VLM判定方式(画像やソースコードを入力し評価用プロンプトに基づいて採点),ルールベース方式(HTML/CSS/JSのタグやキーワードの有無によりスコア化),Paper Quiz(論文本体からクイズを50問生成し,スクリーンショットを見たVLMが回答)の3つ.評価項目は,デザイン性,情報の完全性,リンク品質,インタラクティブ性,情報量(情報伝達性)の5つ.
Paper2Web における自動評価のプロセス.Project Pageのスクリーンショットとソースコード,および論文本体を入力とし,LLM/VLM判定・ルールベース・Paper Quiz の3方式で5つの評価項目を算出する.

自動指標と主観評価の相関

正の相関 負の相関

指標名をクリックすると評価方法を表示

デザイン性 レイアウト・視覚要素
+0.3136 ±0.109
MLLM-as-a-Judge

HTMLとスクリーンショットをMLLMが見て,次の3項目を1〜5点で採点し,その平均をとる(Aesthetic).

  • 要素品質:画像・図の解像度と視認性
  • 視覚的魅力:配色やレイアウトから受ける印象
  • レイアウト均衡:要素の配置,余白,全体の整合性
情報の完全性 著者・タイトルなど
+0.2796 ±0.182
MLLM判定(HTML+画面)

論文のコア内容がページに含まれているかを,MLLMが1〜5点で採点する(Completeness).

  • 主要セクション:Abstract・Method・Results といった論文の骨格が揃っているか
  • メタデータ:著者・タイトルなど,論文を同定するための情報
  • 付随情報:デモ動画,引用形式,論文・コードへのリンク
リンク品質 論文リンク・著者情報など
−0.0930 ±0.468
MLLM判定(HTML+画面)

外部リンクと内部ナビゲーションの充実度を,MLLMが1〜5点で採点する(Connectivity).

  • 研究資産へのリンク:論文・コード・デモ・データセットへのリンク
  • 学術的文脈:関連研究へのリンクの有無と質
  • ページ内ナビゲーション:見出しへのアンカーやメニューで目的の節へ迷わず移動できるか
インタラクティブ性 動画・視覚効果など
+0.0576 ±0.454
MLLM+実測

CSS/JSの動的要素に対するMLLMの主観評価と,動的要素の実測数を組み合わせて1〜5点とする(Interactivity).

  • 基本的な操作:ホバー効果,開閉するセクション,クリックできるタブ
  • 可視化の操作性:動かせるグラフ,結果を見比べる比較スライダー
  • デモ:埋め込みの実行デモ,または動作を確認できる動画
  • ナビゲーション補助:追従する目次,節へのジャンプ,トップへ戻るボタン
情報量 論文の内容の伝わりやすさ
−0.1948 ±0.138
PaperQuiz

論文の内容がProject Pageからどれだけ伝わるかを,クイズ形式で測る(PaperQuiz).

  • 出題:論文本文からLLMが4択問題を50問自動生成する(本文に直接書かれた「逐語問題」25問,動機や貢献の統合など高次の理解を要する「解釈問題」25問)
  • 解答:Project Pageのスクリーンショットのみを与えられた6つのMLLMが,外部知識を使わず,根拠となるページ内の箇所を示しながら解答する
  • 集計:ここでは解釈問題25問の正答率を用いた.Project Pageを見ただけで研究の要点まで掴めるかを表す

値は相関係数の平均 ± 標準偏差.右に伸びるほど,人間による高評価と同じ傾向を示す.

まとめ

「たくさん書く」より,「見やすく,簡潔に伝える」. 文字による情報量が多いProject Pageよりも,デザイン性を重視した簡潔なProject Pageのほうが高く評価される傾向が見られた. 実際のProject Pageを用いた比較は定性評価を参照.

評価したProject Pageを見る

54 pages

サムネイルを選ぶと,そのProject Pageの各指標の点数と人手評価の順位,そして実際のページを確認できる.

デザイン性

情報の完全性

リンク品質

インタラクティブ性

情報量

人間の順位

下の枠には実際のProject Pageを埋め込んでいる.枠内でそのまま操作できる.

(参照: Y. Chen et al., "Paper2Web: Let's Make Your Paper Alive!," arXiv:2510.15842, 2025. https://arxiv.org/abs/2510.15842

定性評価

同じ論文でも,Project Pageの作り方で伝わりやすさは変わるのか?

Project Page のわかりやすさに寄与するデザイン要因を明らかにするため,CVPR 2023–2025 の高被引用論文 75 本の Project Page を 6 名で精読し,"わかりやすさ" を左右する特徴を「第一印象」「操作性」「図と文の比率」「手法の伝達」の 4 観点に整理した. ここでは代表例として,CVPR 2025 に Oral として採択された論文 "Continuous 3D Perception Model with Persistent State"(CUT3R,Wang et al.)の Project Page を取り上げ,実際に公開されている Project Page(A. Original),Paper2Web による自動生成例(B. Paper2Web),悪い Project Page の特徴をもとに Claude Code で生成した例(C. Bad example)を 4 観点で比較する.

A. Original (Good example)  実際に公開されている Project Page を枠内にそのまま埋め込んでいる(直接操作可能). 別タブで開く ↗

第一印象

動画で内容が一目でわかる

操作性

動かして試せるデモ

図と文の比率

図で見せる

手法の伝達

図+説明で流れが追える

B. Paper2Web  Paper2Web による自動生成例を枠内にそのまま埋め込んでいる(直接操作可能).構成は整っているが,図が少なく解説が冗長.

第一印象

図なし

操作性

×

静止画のみ

図と文の比率

解説が冗長

手法の伝達

図+要約

C. Bad example  悪い Project Page の特徴をもとに生成した例を枠内にそのまま埋め込んでいる(直接操作可能).文字が中心で,内容の判読が困難.

第一印象

×

文字のみ

操作性

×

静止画 1 枚のみ

図と文の比率

×

文字のみ

手法の伝達

×

判読不可

3 例の比較から,同じ論文であっても Project Page の設計次第で伝わりやすさが大きく変わることが確認できた.冒頭の動画と触れるデモを備えた A. Original に対し,B. Paper2Web は体裁こそ整っているものの図が少なく解説が冗長で,C. Bad example は文字のみで内容の判読が困難であった.

以上より,冒頭で内容が伝わる第一印象,動かして確かめられる操作性,図で見せる図と文章のバランスが,わかりやすい Project Page の条件として重要である.Project Page は論文では示せない動画や補足情報を発信できる媒体であり,こうした特性を活かした設計が研究の理解促進に寄与すると考えられる.

(参照: Q. Wang et al., "Continuous 3D Perception Model with Persistent State," CVPR 2025. https://cut3r.github.io/

謝辞

本研究はMIRU2026 若手プログラムにおける活動の一環として行われました.また,本プログラムを通してメンターとしてご指導いただいた上田栞さんに深く感謝いたします.

BibTeX

@misc{MIRUwakate2026projectpage,
  title        = {わかりやすいプロジェクトページを求めて},
  author       = {Arimura, Koshun and
                  Oumi, Yusuke and
                  Konno, Tsubasa and
                  Sugaya, Tomoki and
                  Takezaki, Shumpei and
                  Yamamoto, Riku},
  howpublished = {MIRU2026 若手プログラム},
  year         = {2026}
}